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教授。深く読み込んでも、どうしても差別化ポイントが発見できなかったら―。
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そういう、いよいよの事態になったら無効化活動に取り掛かるしかないでしょう。
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そうすると公知文献を探さないといけませんよね。でも、何から手を付けていけばいいのか、よく分かりません。
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基本的に、特許に対抗する最も有効な公知文献は、やはり特許です。公開されているものを、あまねく調査して無効化のロジックを立てるしかないですね。
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その調査が難しいんじゃないですか〜。
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書誌事項を読むと、そのヒントが書かれています。
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え??どこ??
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FIとFタームという欄です。
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IPCというのもありますけど??
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IPCは国際特許分類(International Patent Classification)というもので、特許文献の技術内容を約7万の項目に分類してあります。FIはFile Indexの略で、IPCを日本の技術に合わせてmodifyしたものです。約17万の項目に分類してあります。こういったインデックスを各発明に対して特許庁が付与することになっています。
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ということは、IPCは世界統一分類で、FIは日本独自分類なんですね。同じものが2つあるのか…。
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日本が世界に先駆けて強い技術というのがありますからね。それをIPCに当て嵌めてしまうと、分類が雑になって、かえって都合が悪いんですよ。なので、国内特許の検索についてはFIを使うのがいいでしょう。ここを見るとFIと技術の対応が分かります。
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Fタームというのは??
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これも日本独自の分類ですが、FIとは分類の視点が異なるという特徴を持っています。特許庁の審査官が機械検索をするための分類で、約34万の項目に分かれています。ここを見るとFタームと技術の対応が分かります。
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そうすると、Fタームで検索した方がよさそうですね。
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国内特許の調査の場合は、ですけどね。ただ、Fタームについては、誤りや漏れを指摘する声もあり、一概には何とも言えません。それと、Fタームだけではノイズが多すぎて、検索した後の読み込み作業が億劫になります。
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Fタームだけでは難しいということ??
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はい。そこで、キーワード検索を併せて行うわけです。
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該当する技術の中で、共通するワードを条件に加えるわけですね。
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そうなんですが、これが意外と悩ましいんです。
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え〜。キーワードで悩むことなんて、あります??
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例えば、ミラーという単語1つとってみても、鏡、反射素子、偏向手段というように出願人によって別の言葉で言い換えているケースがあるんです。それらを含めて検索しないと抜け漏れが多くなりますよね。
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うっ。確かに。
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また、"折返し"と"折り返し"のように送り仮名の問題もあります。
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日本語って面倒ですね。
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USPでも事情は同じですよ。rotation、turn、revolve、spin、pivot、…。これ、全部"回転する"ですし、〜ingがあったりなかったり、そんなことまで考えないといけませんから。
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う〜ん。必要な案件だけ漏れなく抽出するのは、難しそうですね。
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100%は無理だと思います。なので、必要な案件が絶対に漏れないように、少しノイズが含まれるのはやむを得ないとして検索するのがコツになるでしょうね。たいていの場合は、読み込み作業は分担してやるでしょうし、テーマメンバーの人数との兼ね合いで、ヒット件数を調整しながら、キーワードの絞り込みを行います。
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う〜ん。これは自信ないです。
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企業であれば、そういうときこそ、知財部に相談ですよ。FIやFタームの選定とか、質問すれば親切に回答してくれますよ。あと、キーワードの前方一致とか後方一致とかの小技も教えてくれます。
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あ、そうですね。
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それと、速報調査や新着特許配信というサービスを利用すると、調査の負担が時間で分散されるので、少し楽になります。
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調査をまとめてやろうとすると、件数だけでうんざりしますもんね。
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教授。これで公知文献を発見すれば、特許対策はばっちりですね。
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そう簡単に話が済めば苦労はしません。前にも言いましたが、ドンピシャの案件が見つかることなんて殆どありませんし。
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え〜。だったら、公知文献の探索なんて意味ないじゃないですか〜。
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ですから、あの手この手でロジックを展開するんです。
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またロジックですか…。
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特許法第29条に"特許の要件"というのが2つ挙げられています。一般に新規性と進歩性と言われているものですが、ヤバい特許を無効化するということは、この2つの要件を崩すことに他なりません。ドンピシャの案件がなかったということは、"新規性"から崩せなかったということですから―。
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あとは、"進歩性"から崩すしかない、ということですね。
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特許法第29条第2項には「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。」とあります。"当業者容易"という言い方をしたりもしますが、早い話、「その発明は当業者容易である」という結論に至るロジックを組み立てて、"進歩性"を崩すわけです。
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う〜ん。具体的にはどうすればいいんですか??
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例えば、ヤバい特許の請求項の構成要件がA、B、Cの3つあったとしましょう。もし、過去の文献に"A+B+C"という発明がなければ、"新規性"はクリアされていることになります。しかし、その文献調査で、"A+B"という特許と、"C"という特許が見つかった場合、このヤバい特許の"進歩性"は担保されているか。これが問題です。
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え〜。2つの発明を組み合わせる発想が、誰でも簡単に思いつくものとは限らないですよ??
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確かに、そのとおりです。しかし、"A+B"という発明の効果Xと、"C"という発明の効果Yがあって、"A+B+C"の発明の効果がX+Yである場合、審査官は"当業者容易"と判断するケースが多いんです。
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じゃぁ、組み合わせ発明では特許にならないってこと??
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必ずしもそうではありません。例えば、2つの発明を組み合わせることに必然性がなく、当業者ではとても発想できない場合とか、"A+B+C"にしか実現できない新しい効果Zが主張できる場合は、"進歩性"があると判断されます。
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う〜ん。これはなかなか手強いですね〜。
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手強いですよ。この考え方はしっかり覚えておくといいです。なぜなら、自分の出願した発明が拒絶される殆どの理由が、この"当業者容易"というロジックですから。
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え。え。そんなこと言ったら、発明なんてできないですよ。
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ですからね、そういう拒絶理由を想定して、明細書を作り込んでいく必要があるわけです。ま、ある種のテクニックですね。
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何か、特許を書くの、厭になってきました…。
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でも、先に権利を取られたら、余計に苦しくなりますよ??
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う〜ん。それはもっと厭です…。
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"進歩性"を崩すロジックは、たいていの場合、この"当業者容易"に持っていくことが多いです。しかし、"進歩性"そのものを論理的に崩す方法も有効です。
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どんなケースですか??
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それについては、次回に説明しましょう。
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